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ビットコインへ投資する前に知っておくべき多くのリスク

ビットコイン(Bitcoin)とは

 ビットコインは政府機関、中央銀行、その他法人によって裏付けがされてない分散化された仮想通貨です。公共トランザクションログを利用しているオープンソースプロトコルに基づく、Peer to Peer型のネットワークによって運営されています。公共トランザクションログを利用しているというのは、全てのビットコインの取引履歴をブロックチェーンと呼ばれる公開分散台帳に記録し、それを参加者で共有しているということです。ビットコインは仮想通貨としての危険性を訴える論調もあり、通貨ではないとする意見も多くあります。我が国においてビットコインは、民法402条第1項及び第2項における通貨に該当していません。*1*2

 ビットコインは2017年4月21日時点で、全世界において一日当たりの取引件数は約30万件、*3 時価総額は約199億ドルにのぼることが指摘されています。*4 我が国においても活発に売買されています。市場調査とコンサルティング会社のシード・プランニングによると、日本円でビットコインが取引できる取引所の2016年下半期の取引高は上半期と比較して、2.3倍の1,830万ビットコイン(約1.3兆円)となりました。*5 現状でのビットコイン取引の大半は投資目的とされています。当ブログではビットコインに投資する前に認識すべき多くのリスクを紹介しています。

価格の変動が大きく危険が伴います

 ビットコインの価格は需要と供給によって決定され、価格の変動は非常に激しく危険です。そのような傾向は今後も持続すると考えられます。*6 また、ビットコインの価格は通貨や金との相関がほとんどありません。したがって、ビットコインは他の通貨に左右されないためリスク管理の役には立ちません。*7

ビットコインは現金を生み出すことはありません

 ビットコインの投資は金や原油などの先物取引と類似しています。何故ならキャピタルゲインのみを目的としているからです。したがってインカムゲインを得ることができません。インカムゲインとは資産を保有することで継続的に受け取ることのできる現金収入のことをいいます。インカムゲインには株式の配当、預金や債券等の利息、投資信託の収益分配金、不動産投資の家賃収入等の利益です。*8 つまり、インカムゲインは現金を生み出すチャンスを提供してくれます。しかし、ビットコインや商品先物などの場合は違います。これらの投資は現金を生み出すことはありません。

政府による規制とビットコインの所有を危惧する使用者

 ビットコインマネーロンダリング、脱税、違法薬物や児童ポルノの取り引きを容易にするため、政府の取り締まりや規制が導入されると考えられます。最大の懸念はテロ組織に対する資金供与であり2015年6月8日、G7エルマウ・サミットにおいて

仮想通貨及びその他の新たな支払手段の適切な規制を含め、全ての金融の流れの透明性拡大を確保するために更なる行動をとる。*9

ことを内容とする首脳宣言が発出されています。

 ビットコインは分散化されているためシステムを終了させることは困難です。しかし政府によるビットコインの取り締まりによって、多くのビットコインユーザーが犯罪行為に関連付けられているビットコインの所有を諦める可能性があります。

取引所の破綻

 ビットコインは支払いの際に10分程度の演算時間が必要となります。その10分の時間を省略するためには、ビットコインを預け自分のビットコインの残高を証明してもらう必要があります。この作業を行っているのが取引所です。しかし、このシステムは極めて脆弱になります。何故なら、現在ブロックチェーンの暗号化は強固であり、改竄するには莫大な計算力が必要になります。世界最速のスーパーコンピューターを何台も以てしても実現することはできません。*10しかし、取引所のデータを改竄することは可能です。マウントゴックス社の破綻は彼らのセキュリティの欠如がもたらしました。取引所のコンピューターのシステムそのものに攻撃が加えられると、対処できない事態がおきてしまう可能性があります。

盗難

 ビットコインをコンピューターに保管することは、財布に大量の現金を保管することと同じくらい危険です。そのためビットコインユーザーは、インターネットに接続されていないパソコンに保存するなどの対策が必要になります。ビットコイン時価総額が199億ドルを越えているため、犯罪者も技術開発に力をいれています。数多くのユーザーからビットコインが盗難されれば、信頼を無くし価格が急落する可能性があります。このような盗難はビットコインユーザーのコンピューターに悪意のあるソフトウェアが感染し、ビットコインを送信させることによって発生する可能性があります。*11

市場競争と優れた競合通貨によって価格の低下が懸念されます

 ビットコインは従来の電子商取引市場において大きな成長を遂げることはありません。なぜなら、ほとんどの消費者は円のかわりにビットコインで商品を購入することに恐らく興味はありません。ビットコインの利点の一つに取引コストが低いことは事実です。しかし、ビットコインが競争を優位に進めるにつれて、電子決済市場の主要な企業が市場競争に対応して取引コストを削減する可能性があります。

 ビットコインは小額支払いの領域で優位性があります。なぜなら、既存の電子決済業者による取引コストはビットコインに比べ非常に高いため、1円や10円などの小額支払いを行うことは実用的ではありません。したがってビットコインはこの領域で競争を優位に進められると考えられます。しかし、おそらくPayPalや類似のサービスからブロックチェーンなどの技術によって、小額支払いが可能になる可能性があります。*12 三菱UFJフィナンシャル・グループは独自の仮想通貨「MUFGコイン」を一般向けに発行する方針を発表しました。決済処理の効率化や取引コストの削減が期待されています。

 民間情報サイトによれば、2017年4月21日時点において800近くの仮想通貨が存在しています。*13 、優れた競合通貨によって、ビットコインの価値の崩壊またはビットコインの永続的な低下を引き起こす可能性があります。

ビットコインは設計上デフレーションが意図されています

 ビットコインユーザーの数が通貨供給量よりも速く増加すれば、デフレーションに繋がる可能性があります。何故なら、ビットコイン通貨供給量の上限は2100万ビットコインに限定されています。したがって、通貨供給量の上限が確定されており時間の経過とともに価値が高くなります。この場合、ビットコインの需要は供給よりも多くなります。*14 ビットコインの更なる値上がりを期待する投資家の最良の選択は、ビットコインを貯蓄して消費しないことになります。しかし、ビットコインの価値が高まり所有者の誰もが消費しなくなれば、流動性が減少し通貨としての意義をなさなくなります。*15 その結果ビットコインの需要は供給よりも少なくなります。将来的にこのようなデフレーションに陥る可能性があります。

ビットコインへの投資はインフレを上回る必要があります

 IMFが2017年4月18日に発表した世界経済見通しによると、2017年の世界経済の実質GDPの成長率は3.5%、日本は1.2%の成長を見込みました。*16 経済が成長すると商品やサービスの需要が高まります。需要が供給を上回れば商品やサービスの価格が上昇します。つまり、物価の上昇を意味します。物価が上昇すると同時に貨幣価値の低下を意味します。何故なら、同じ値段で買えるものが少なくなるからです。*17 さらに通常、貨幣を発行する組織は多くの貨幣を供給します。日本では2017年4月21日時点において、日本銀行国債を買い入れることで貨幣の供給を増加させています。*18 この2つの要因、経済成長と貨幣の供給の増加はインフレを引き起こす可能性があります。したがって通貨の投資はその性質上インフレを上回る必要があります。しかし、このようなケースは滅多にありません。*19 ビットコインへの投資はインフレによってお金を失う可能性があります。

結論

 ビットコインは短期間で価格が大幅に上昇し、投資家やメディアの注目を集めました。価格の急上昇によって短期間で資産を大幅に増やした人もいます。ビットコインの価格は変動が激しく、投資すれば大きく勝つ可能性があります。しかし、同時に大きく資産を失う可能性もあります。また激しい変動に加えて、ビットコインへの投資は多くの乗り越えなければならない課題があります。したがってビットコインに投資することは、多くのリスクを考慮したうえで投資しなければなりません。個人的な意見としてもっともよい投資は、資産が失うリスクをできる限り少なくすることだと考えています。したがってビットコインへの投資は推奨できません。

脚注

*1:ビットコイン」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2017年 04月 21日 22:30 JST、最終閲覧日:2017年4月21日、URL: http://ja.wikipedia.org

*2:杉本大輔. (2014). ビットコイン価格決定要因についての考察

*3:「Confirmed Transactions Per Day」『BLOCKCHAIN』最終閲覧日:2017年4月21日、URL: https://blockchain.info/ja/charts/n-transactions

*4:「CryptoCurrency Market Capitalizations」最終閲覧日:2017年4月21日、URL: http://coinmarketcap.com/

*5:「仮想通貨法施行を前に、ビットコインのニーズと仮想通貨取引所のビットコイン取引量・シェアを調査」『シード・プランニング』2017年 02月 28日、最終閲覧日:2017年4月21日、URL: https://www.seedplanning.co.jp/press/2017/2017022801.html

*6:Fink, Christopher and Johann, Thomas, Bitcoin Markets (September 17, 2014). Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=2408396 or http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.2408396

*7:Yermack, D. (2013). Is Bitcoin a Real Currency? NBER Working Paper (19747), 1–14

*8:インカムゲイン」『初めてでもわかりやすい用語集 SMBC日興証券』最終閲覧日:2017年4月21日、URL: http://www.smbcnikko.co.jp/terms/

*9:「2015 G7エルマウ・サミット首脳宣言(仮訳)」『外務省』2015年 06月 08日T、最終閲覧日:2017年4月21日、URL: http://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page4_001244.html

*10:Harvey, Campbell R., Bitcoin Myths and Facts (August 18, 2014). Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=2479670

*11:Lenz, K. F. 2013. 新インターネット通貨 Bitcoin の法的問題: EU 法・ドイツ法を中心に. 青山法務研究論集, 7, 1-20.

*12:Grinberg, Reuben, Bitcoin: An Innovative Alternative Digital Currency (December 9, 2011). Hastings Science & Technology Law Journal, Vol. 4, p.160. Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=1817857

*13:「CryptoCurrency Market Capitalizations」最終閲覧日:2017年4月21日、URL: http://coinmarketcap.com/

*14:Fink, Christopher and Johann, Thomas, Bitcoin Markets (September 17, 2014). Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=2408396 or http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.2408396

*15:石田和, & 廣安知之, & 山本詩子. (2014). Bitcoin

*16:「World Economic Outlook, April 2017: Gaining Momentum?」『IMF』2017年 04月 18日、最終閲覧日:2017年4月21日、URL: http://www.imf.org/en/Publications/WEO/Issues/2017/04/04/world-economic-outlook-april-2017

*17:「インフレーション」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2017年 04月 21日 22:30 JST、最終閲覧日:2017年4月21日、URL: http://ja.wikipedia.org

*18:「金融政策 国債買入れ」『日本銀行』、最終閲覧日:2017年4月21日、URL: https://www.boj.or.jp/mopo/measures/mkt_ope/ope_f/index.htm/

*19:「Should I Invest in Bitcoin?」『DEFINE FINANCIAL』2017年 01月 16日、最終閲覧日:2017年4月21日、URL: https://www.definefinancial.com/blog/invest-bitcoin/