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図表で見るS&P株価指数 1871年~2017年

はじめに

 ロンドン証券取引所は1801年に設立されました。しかし、イギリスでは泡沫会社禁止法によって、承認を得ていない会社が株式を発行することは禁止されていました。*1 ゆえに、企業は同法が存続した1825年まで、株式を発行することができませんでした。したがって、極めて限られた取引となりました。これによって、ロンドン証券取引所は真のグローバルな超大国を阻止することができませんでした。そのため、1790年にアメリカで最初の取引所である、フィラデルフィア証券取引所が創設されたことは歴史上重要な瞬間になりました。その後、1817年にニューヨーク証券取引所が設立されました。それ以来、世界の株式市場でのアメリカのシェアは0%から、1899年末には15%に上昇し、イギリスに次ぐ世界第2位の市場となりました。(図表1)

 そして、現在のアメリカの株式市場は世界でもっとも大きく、世界の時価総額の約半分を占めています。(図表2) 次に大きい市場である日本の約6倍の規模です。したがって、アメリカの株式市場は世界でもっとも重要な株式市場であり、その歴史を再検討することは意義のあることでしょう。また、当ブログは2013年にノーベル経済学賞を受賞した、ロバート・シラー教授の提供するデータを使用しています。*2

「図表1」1899年末の世界株式市場の内訳

1899年末の世界株式市場の内訳

(Source : クレディ・スイスCredit Suisse Global Investment Returns Yearbook 2017」)

「図表2」2016年末の世界株式市場の内訳

2016年末の世界株式市場の内訳

(Source : クレディ・スイスCredit Suisse Global Investment Returns Yearbook 2017」)

S&P株価指数および配当の長期チャート

 長期でのチャートを見るのは有益なことです。データはシラー教授の提供するS&P株価指数の時系列、配当、CPIを使用しています。このデータにはS&P500の起源である1923年以前のデータが含まれています。そのため、算出以前のデータはシラー教授の研究と調査によるものです。

 図表3は、1871年1月から2017年4月の時系列および、1871年1月から2017年3月の配当を示しています。青い線は1871年1月の株価が4.44から、2017年4月には2357となり、約530倍になったことを表しています。オレンジの線は1871年1月の配当が0.26から、2017年3月には46.38になったことを表しています。

 図表4は、図表3で使用したデータのインフレ調整後を示しています。図表5は時間の経過とともに消費者物価指数が上昇することを示しています。図表4の青い線は1871年1月の株価が86.98から、2017年4月には2357となり、約86倍になったことを表しています。オレンジの線は1871年1月の配当が5.09から、2017年3月には46.42になったことを表しています。

「図表3」S&P株価指数および配当(1871~2017)

S&P株価指数および配当(1870~2017)

(Source : イェール大学「ONLINE DATA ROBERT SHILLER」)

「図表4」インフレ調整後 S&P株価指数および配当(1871~2017)

インフレ調整後 S&P株価指数および配当(1870~2017)

(Source : イェール大学「ONLINE DATA ROBERT SHILLER」)

「図表5」消費者物価指数(1871~2017)

アメリカ消費者物価指数(1870~2017)

(Source : イェール大学「ONLINE DATA ROBERT SHILLER」)

インフレ調整後のS&P株価指数 (配当を含む) パフォーマンス

 実際にS&P株価指数に投資をしたらいくらになったのでしょうか。図表6および図表7は1871年1月に1万円の投資を行い、それを2016年12月まで保有した場合のパフォーマンスを示しています。各年の年率リターンを使用し、図表7は配当を追加しました。そして、実質のリターンを求めるために、それぞれインフレ調整を行い、税金や取引費用は必要ないと仮定しています。

 図表6は、1871年1月にS&Pに投資された1万円が、それぞれの年で再投資した場合に2016年末には4万499円となり、年率2.25%のリターンとなったことを表しています。一方、図表7はS&Pに投資された1万円が、配当を再投資した場合に2016年末には2385万1665円となり、年率6.82%のリターンとなったことを表しています。したがって、長期投資のほとんどの利益は配当によって産み出されていることが分かります。

「図表6」配当を含まないS&P株価指数のパフォーマンス(1871~2016)

配当を含まないS&P株価指数のパフォーマンス(1870~2016)

(Source : イェール大学「ONLINE DATA ROBERT SHILLER」)

「図表7」配当を含むS&P株価指数のパフォーマンス(1871~2016)

配当を含むS&P株価指数のパフォーマンス(1870~2016)

(Source : イェール大学「ONLINE DATA ROBERT SHILLER」)

合理的な収益を得る長期投資の期間

 S&P株価指数の投資は長期的に素晴らしいパフォーマンスを上げることが分かりました。しかし、約150年間にわたって長期投資を行うのは現実的ではありません。そのため、合理的な収益を得るにはどのくらいの期間が必要でしょうか。そこで1871年1月に投資を行い、それを12月までの40年間、35年間、30年間、25年間、20年間、15年間、10年間、5年間保有した場合の実質利回りを計算しました。条件は図表7と同じです。そして、1872年1月と1年ごと前進しました。その結果、40年間、35年間、30年間、25年間、20年間の期間において、年間リターンがマイナスになることは無く、常に正の実質利回りを確保しました。したがって、20年を超える期間にわたって投資を予定する投資家は、いかなる場合でも良好なパフォーマンスを期待することができます。

「図表8」S&P株価指数 40年、35年、30年、25年の実質利回り(1871~2016)

S&P株価指数 40年、35年、30年、25年の実質利回り(1871~2016)

(Source : イェール大学「ONLINE DATA ROBERT SHILLER」)

「図表9」S&P株価指数 20年、15年、10年、5年の実質利回り(1871~2016)

S&P株価指数 20年、15年、10年、5年の実質利回り(1871~2016)

(Source : イェール大学「ONLINE DATA ROBERT SHILLER」)

長期間の投資を続けることが損失の可能性を減らします

 20年を超える期間の投資は常に正の実質利回りを確保したことがわかりました。しかし、多くの投資家は長期リターンを得るために、お金を失うことがあります。何故なら、市場は短期的には非常に不確実だからです。確証バイアスによって投資家は直近の値動きを重視し、それが将来の値動きを表すものだと考えてしまいます。そのため、市場が暴落すると、投資家はパニックを起こし株式を売却する傾向があります。しかし、長期間の投資を続けることで損失の可能性を減らすことができます。

 図表10~14は先ほどの図表8~9と同じ条件で、それぞれの年の実質リターン(青い線)とそれぞれの年の平均(赤い線)を比較しています。短期間の実質リターンは平均リターンから大きく逸脱します。しかし、リターンは時間の経過とともに平滑化する傾向がわかります。したがって、長期間にわたって規律を維持できる投資家は、時間の経過とともに報われるでしょう。

「図表10」S&P株価指数 1年間の実質リターンと平均(1871~2016)

S&P株価指数 1年間の実質リターンと平均(1871~2016)

(Source : イェール大学「ONLINE DATA ROBERT SHILLER」)

「図表11」S&P株価指数 3年間の実質リターンと平均(1871~2016)

S&P株価指数 3年間の実質リターンと平均(1871~2016)

(Source : イェール大学「ONLINE DATA ROBERT SHILLER」)

「図表12」S&P株価指数 10年間の実質リターンと平均(1871~2016)

S&P株価指数 10年間の実質リターンと平均(1871~2016)

(Source : イェール大学「ONLINE DATA ROBERT SHILLER」)

「図表13」S&P株価指数 20年間の実質リターンと平均(1871~2016)

S&P株価指数 20年間の実質リターンと平均(1871~2016)

(Source : イェール大学「ONLINE DATA ROBERT SHILLER」)

「図表14」S&P株価指数 40年間の実質リターンと平均(1871~2016)

S&P株価指数 40年間の実質リターンと平均(1871~2016)

(Source : イェール大学「ONLINE DATA ROBERT SHILLER」)

結論

 過去約150年間のS&P株式市場を見みると、多大な忍耐を必要とする時期はありましたが、S&P株式市場の投資は常に良好であったといえます。S&P株式市場は長期にわたって優れたパフォーマンスを示してきました。しかし、信頼を置きすぎることは危険なことです。何故なら、生存バイアスをもたらす可能性があるからです。誰にでも、将来の市場を正確に予測することはできません。したがって、米国以外のグローバルな地域にも注目することが重要です。

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脚注

*1:「泡沫会社禁止法」『kotobank 株式会社朝日新聞社』2017年 05月 16日 15:00 JST、最終閲覧日:2017年 05月 16日、URL: https://kotobank.jp/

*2:「ONLINE DATA ROBERT SHILLER」『イェール大学』、最終閲覧日:2017年 04月 21日、URL: http://www.econ.yale.edu/~shiller/data.htm