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投資向上委員会

投資スキルを向上させたいブログです

産業の変化に対応した投資が良好なリターンを生み出します

はじめに

 近年スマートベータと呼ばれるファクターへの投資が注目を集めています。2014年4月にGPIF (年金積立金管理運用独立行政法人) が、国内株式のアクティブ運用でスマートベータを採用し話題を呼びました。*1 また、スマートベータ型のETFが上場されるなど個人投資家にも身近になってきています。

 スマートベータに明確な定義はありませんが、一般的に従来の株価指数時価総額加重をベースにしない、非時価総額加重を表す言葉として多く用いられます。 *2 野村證券によると

スマートベータとは 時価総額以外の基準を重視して財務指標や株価の変動率など銘柄の特定の要素に基いて構成された指数 *3

としています。スマートベータは特定の要素、つまりファクターに基づく別の加重方法を使うことで、リスクとリターンのより良いトレードオフを図ろうとするものです。

 日本取引所グループでは例として以下のファクターを挙げています。 *4 

しかし、例には挙げられませんでしたが、重要なファクターに産業があります。何故なら、衰退している産業に投資するのは危険だからです。したがって、成長している産業に投資することが重要になります。

経済活動別GDPの比率(1994年と2015年の比較)

 私たち人類は3度にわたる産業革命を経験してきました。第一次産業革命では蒸気機関による動力を獲得し、第二次産業革命によって蒸気機関から電力・モーターによる動力に革新されました。第三次産業革命ではコンピューターによって自動化が進みました。そして、現在大量の情報を基に人工知能が自ら考えて最適な行動を取ることで、自律的な最適化が可能になると考えられています。つまり、第四次産業革命を迎えようとしています。 *5

 技術革新が新たな新産業を生み出します。一方、技術革新による産業構造の変化から衰退していく産業もあります。図表1は日本の経済活動別GDP (名目) の比率を示しています。左の円グラフは1994年、右の円グラフは2015年の構成をそれぞれ表しています。図表2は1994年を100として作成した、経済活動別GDP (名目) の推移です。

 図表1を見ると、1994年の第一次産業 (農林水産業) の比率は1.9%、2015年のシェアは1.1%と僅かに減少しています。第二次産業 (鉱業、製造業、建設業) の比率は31.8%から26%と減少しています。一方、第三次産業 (その他) は66.2%から72.1%に上昇しています。つまり、第一次、第二次産業の比率は減少し、第三次産業の比率は上昇しています。図表2では、第一次、第二次産業は低下傾向にあり、第三次産業は上昇傾向にあります。つまり第一次、第二次産業の成長は低下し、第三次産業の成長は上昇したことを示しています。したがって図表1と2から、日本企業が得意としてきたものづくりを中心とした産業構造は、すでに第三次産業を中心とした産業に推移していることが分かります。*6

「図表1」1994年、2015年経済活動別GDPの比率(名目)

1994年、2015年経済活動別GDPの比率

(Source : 内閣府「国民経済計算年次推計」)

「図表2」1995年~2015年の名目経済活動別GDPのチャート(1994年を100として)

1995年~2015年の名目経済活動別GDPのチャート

(Source : 内閣府「国民経済計算年次推計」)

業種別株価指数

 図表3は2007年4月から東証株価指数33業種に投資された1万円を再投資した場合、2017年4月までの10年間でいくらになるかを表しています。しかし、税金や配当、インフレ率などは考慮していません。したがって、簡単な計算となっているため注意が必要です。データはカブドットコム証券が提供するkabuステーションを使用しています。

 内訳をみると、ゴム製品、情報・通信業、サービス業の3業種のパフォーマンスが良好でした。ゴム製品は2017年4月には1万7493円となり、年率リターンは5.75%となりました。情報・通信業は同1万5461円、年率リターンは4.45%となりました。サービス業は同1万5304円、年率リターンは4.35%となりました。

 一方、海運業、鉄鋼、鉱業の3業種のパフォーマンスが悪い結果となりました。海運業は2017年4月には2353円となり、年率リターンは-13.47%減となりました。鉄鋼は同3528円、年率リターンは-9.89%減となりました。鉱業は同4052円、年率リターンは-8.64%となりました。

「図表3」10年間で東証株価指数33業種に投資された1万円の累積実績

10年間で東証株価指数33業種に投資された1万円の累積実績

(Source : カブドットコム証券 kabuステーション)

結論

 最もパフォーマンスが悪かった海運業に1万円投資していたら、わずか2353円に資産が目減りし、年率リターンはマイナスの13.47%減の最悪な結果になりました。一方、最もパフォーマンスが良かったゴム製品に投資をしていたら、1万7493円に資産が増え、年率リターンは5.75%増と大きく結果が異なります。したがって、投資をする際に産業の選択は重要であることを示しています。

 ほかの良好なパフォーマンスを示した情報・通信業やサービス業は、第三次産業に所属しています。また、ゴム製品は第二次産業に属しています。しかし、パフォーマンスが悪かった鉄鋼や鉱業も第二次産業に属しています。したがって、同一の産業でも結果が異なる場合があることが分かりました。そのため、次回のブログではもっと詳細に産業構造の変化を見ていきます。

脚注

*1:「GPIF:国内株運用に日経400、スマートベータ採用-J-REITも」『Bloomberg』2014年4月7日 08:03 JST、最終閲覧日:2017年5月14日、URL: https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2014-04-06/N3M3MI6K50XS01

*2:内誠一郎. "スマートベータ指数がもたらすパラダイムシフト." 証券アナリストジャーナル 51.11 (2013): 37-46.

*3:「証券用語解説集」『野村證券https://www.nomura.co.jp/terms/japan/su/A02317.html

*4:S&P/JPX スマート・ベータ指数シリーズ」『日本取引所グループhttp://www.jpx.co.jp/markets/indices/smart-beta/

*5:経済産業省. (2016). 第4次産業⾰命による産業構造の転換と⼈材育成, http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/jinzaiikusei_dai1/siryou5.pdf.

*6:伊藤 宗彦. (2014). 日本の産業構造変化からみるビジネス・チャンス. 神戸大学経済経営研究所. RIEB ニュースレターNo.138, 2014年5月号.